オープンデータ情報ポータル

2013/02/23

リポート

 世界中でオープンデータを活用した課題解決イベントを一斉に行う「インターナショナル・オープンデータ・デイ」が2月23日、各都市で開催された。日本では8都市、世界では100を超える地域でハッカソン(時間とテーマを絞り集中的にソフトウエアを開発する集まり)などを市民たちが企画、運営した。

 当初、日本の会場としては青森、会津若松、東京、千葉、横浜、名古屋、鯖江の7カ所が予定されていたが、開催直前になって福岡市での開催も決定。合計8カ所で、各地に根差した課題や活性化策の議論、そしてソフトウエアやコンテンツの作成を進めた。

 

 横浜会場では「横浜街歩きアプリ体験ツアー」も行われた。これは、今年に入って行われたハッカソン、アイデアソン(実現すべきアイデアを出し合う集まり)の成果として生まれたアプリを手に、実際に市街地を歩きながらその動作を検証してみようというものだ。

 朝10時、横浜マリンタワーに集合した参加者たちは、まず自身の持つスマートフォンやタブレットに「横浜歴史フィールドミュージアムAR」と名付けられたアプリをインストールした。「拡張現実」を意味するAR(Augmented Reality)は、現実社会の光景にデジタルデータを組み合わせて表示する仕組みで、近年、スマートフォンの普及を背景に急速に実用化が進みつつある。1月に行われたアイデアソンで、横浜の観光振興にARが有効では、との提案がなされ、その後のハッカソンでアプリが作られた。

 マリンタワーの展望台から眼下に広がる横浜の街並みにスマートフォンを向けると、そこに見える場所についての情報が表示される。それをクリックすると、詳しい説明に加え、その場所を描いた古い絵画が、現在の風景に重なるように映し出される。これはARの技術に加え、横浜市立図書館が所蔵する絵画の画像をオープンデータとして提供したことで可能になった。

 

 千葉会場では「こどもNo.1千葉」を統一テーマに掲げ、地域と子育て、という視点で3つのチームに分かれて意見を交わした。そのうちのひとつは「FixMyStreet」という仕組みを子育てにどう生かせるか議論。FixMyStreetは英国の市民団体が始めた、道路など公共設備の問題点を市民が発見し、行政と情報やデータを共有しながら解決していくためのウェブサイトで、日本版を札幌のウェブ開発企業が運用している。

 このチームはオープンデータデイに先立ち、実際に千葉市内を歩き、壊れたベンチなど目にした課題をFixMyStreetにアップしてその反響や効果を観察。そうした経験も踏まえながら、この仕組みをより効果的に活用するためのアイデアを出し合った。

 テーブルに千葉市長が座り「この仕組みなら行政に情報を提供するだけでなく、市民が自分の手で解決することも促せるのでは」と問題提起する一幕も。これを受けて「解決に貢献した人を可視化し、ランキングすればモチベーションの向上になる」「しかし行政に無断で手をつけるのも問題では」など活発なやりとりが展開された。

 

 東京会場には50人以上が参加。うち20名ほどがその場でプログラムを書けるエンジニアということで、本格的なハッカソンが行われた。

 「ハッカソンは盛り上がるほど黙々と作業に没頭するので、あまり絵にならないんですよ」と主催者は笑うが、広い会場には熱気があふれていた。いくつかのチームに分かれ、実際の行政データや地図情報などを使いながらアプリ開発を実践した。

 公開しているデータを素材として提供した区の職員は「こういう場所に来ると、自分たちの地域のことが意外に知られていなかったり、とさまざまな気づきがある。ケーススタディーになるようなデータを積極的に提供し、そこから何が返ってくるのか、感じ取りながらオープンデータに取り組んでいきたい」と語った。

 

 午後6時からは各地をネットで結び、成果発表会も開催された。名古屋会場からは、70人以上が参加し、観光情報、安全・安心、子育て支援など幅広いテーマでアイデアソン、ハッカソンを実施したとの報告があった。

 横浜では同時に、昨年発足したNPO法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブの設立記念パーティーを開催し、企業や行政の担当者、研究者、市民団体のメンバーなど多くの参加者を集めた。このNPOは多様なオープンデータを相互に連携させ、ウェブ空間に巨大な知識データベースを構築しようと活動している。

 

 どの会場でも目立ったのは、産官学そして市民社会という立場を超えた、インターネットらしい自由な雰囲気でのコラボレーション。そして議論だけではなく、具体的な行動を起こしていこうとするアクティブ志向の姿勢だ。今後、オープンデータが日本に浸透していくかどうかは、こうした広範囲な協調と行動を継続できるかどうかにかかっている。

 

関連リンク
公式ウェブサイト(日本) http://odhd13.okfn.jp/
公式ウェブサイト(世界) http://opendataday.org/